神戸地方裁判所 平成7年(ワ)1371号 判決 1996年5月16日
原告
大津孝雄
被告
片山和寛
主文
一 被告は、原告に対し、金二四六七万三二九一円及びこれに対する昭和六一年一二月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを三分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告は、原告に対し、金四〇三三万四三三二円及びこれに対する昭和六一年一二月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 本件は、後記交通事故(以下「本件事故」という。)により傷害を負つた原告が、被告に対し、自動車損害賠償保障法三条、民法七〇九条に基づき、損害賠償を求める事案である。
なお、付帯請求は、本件事故の発生の日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金である。
二 争いのない事実等
1 交通事故の発生
(一) 発生日時
昭和六一年一二月一三日午後一一時二五分ころ
(二) 発生場所
神戸市中央区布引町四丁目二番三号先 信号機により交通整理の行われている交差点(以下「本件交差点」という。)
(三) 争いのない範囲の事故態様
原告は、自動二輪車(一神戸つ九二。以下「原告車両」という。)を運転し、本件交差点を北から南へ直進しようとしていた。
他方、被告は、普通乗用自動車(神戸五九る五三一七。以下「被告車両」という。)を運転し、本件交差点を西から東へ直進しようとしていた。
そして、原告車両の右側面に、被告車両の右前部が衝突し、原告車両は転倒した。
2 責任原因
本件事故に関し、被告には前方不注視の過失があるから、民法七〇九条により、被告は本件事故による原告の損害を賠償する責任がある。
なお、原告は、被告は被告車両の運行供用者である旨主張し、被告は、これを否認して、被告車両の運行供用者は訴外合資会社片山商店である旨主張する。
この点について念のため判断すると、被告本人尋問の結果により、被告は、本件事故当時、同社の許諾のもとに被告車両を私用のために使つていたことが認められるから、被告は、「自動車を使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運行の用に供するもの」(自動車損害賠償保障法二条三項)として、同法三条により、本件事故による原告の損害を賠償する責任がある(同条にいう運行供用者は、当該車両の運行を支配し、運行の利益を享受する者であれば足りるところ、これは、自動車の所有者に限られるものではなく、また、一台の車両につき一人に限られるものではない。)。
三 争点
本件の主要な争点は次のとおりである。
1 本件事故の態様及び過失相殺
2 原告に生じた損害額
四 争点1(本件事故の態様等)に関する当事者の主張
1 被告
本件事故の直前、被告は、青色信号にしたがい、東へ直進すべく、被告車両を運転して西から本件交差点に進入した。
ところが、交通渋滞のため、被告車両は本件交差点中央付近で停止し、対面信号は青色から赤色へと変わつてしまつた。
そして、被告は、このままでは、南北道路を進行する車両の邪魔になると考え、本件交差点中央付近から東へ発進したところ、折から、北から南へ直進中の原告車両と衝突したものである。
そして、原告にも前方不注視の過失があるから、相応の過失相殺がされるべきである。
2 原告
被告が自ら認めるように、本件事故は、青色信号にしたがつて発進した原告車両と、赤色信号を無視して進行してきた被告車両との衝突事故である。
そして、対面する信号機の表示が青色である場合、制限速度を超えない速度をもつて交差点に進入する車両の運転者は、特段の事情のない限り、対面する信号機の表示にしたがつて進行すれば足り、他方面から信号機を無視して交差点に進入してくる他車両があるかもしれないことまでも予想して一時停止又は徐行して進行しなければならない注意義務はないというべきである。
したがつて、本件事故に関し、原告には過失相殺されるべき過失は存在しない。
第三争点に対する判断
一 争点1(本件事故の態様等)
1 甲第一一号証、第一二号証の一ないし四、原告及び被告の各本人尋問の結果、弁論の全趣旨によると、本件事故の態様に関し、前記争いのない事実等の他に、次の事実を認めることができる。
(一) 本件交差点は、JR三ノ宮駅北側に位置し、次の各道路からなるやや変形の十字路である。
まず、本件交差点をはさんで南北に走る道路は、片側三車線、両側合計六車線の幹線道路(通称・フラワーロード)で、本件交差点の北側は北北東方向に向かつている。また、本件交差点の西側は、東行き一方通行の四車線の道路で、北から、左折(北行き)専用一車線、直進(東行き)専用一車線、右折(南行き)専用二車線となつている。さらに、本件交差点の東側は、分離帯をはさんで二車線あり、北側は東行き専用、南側は東から南北に向かう車両専用(JR三ノ宮駅前ロータリーから本件交差点への出入口)となつている。
なお、被告車両は、本件交差点を西から東へ直進しようとしていたが、本件交差点西側の直進(東行き)専用車線から本件交差点東側の東行き専用車線に向かうには、白線で区切られた車両通行帯を走行する必要があり、右車両通行帯は、本件交差点内で、まず左方向、ついで右方向と、やや蛇行する形に画されている。
また、本件事故は、夜間に発生したが、本件交差点は、街灯並びに駅及び道路脇の建物等の照明により、非常に明るかつた。
(二) 本件事故が発生したのは土曜日であり、本件事故当時、本件交差点は、客待ちのタクシー及び客を乗せたタクシーを中心に、相当混み合つていた。
本件事故直前、被告は、被告車両を運転し、青色信号にしたがい、本件交差点に西から進入した。なお、被告車両は、本件交差点の東行き方向の信号が青色に変わる際の先頭車両ではなかつた。
そして、被告は、前方の混雑のため、本件交差点内(中心よりも西側の北行き車線上)で停止し、右停止中に、本件交差点の東行き方向の信号が赤色に変わつた。
これに対し、被告は、このままでは自車が南北方向の交通の妨げになると判断し、折から、前方が進行可能となつたため、本件交差点の東側に進むべく、自車を直進させた。
なお、この際、被告は、自車前方に注意を払つていたものの、自車左前方の、北から南へ本件交差点に進入してくる車両の有無や動向はまつたく確認しておらず、自車と原告車両とが衝突するまで、原告車両の存在を認識していなかつた。
(三) 他方、原告は、原告車両を運転し、本件事故の直前、本件交差点北側の南行き車線のもつとも東側の車線で、赤色信号にしたがつて停止していた。なお、この際、原告車両は、同車線で停止する車両の先頭であつた。
そして、南行き信号が青色に変わつた後、原告は原告車両を発進させ、被告車両と衝突した。
なお、原告は、被告車両と衝突する直前まで被告車両を認識しておらず、本訴訟提起時には、被告車両が南から東へ右折する途中であつたと推測していた。
2 右認定事実(基本的には、原告と被告との間に争いがない。)を前提に、本件事故に関する原告と被告の過失について判断する。
(一) まず、被告の過失について検討すると、そもそも、交通整理の行われている交差点に入ろうとする車両等は、その進行しようとする進路の前方の車両等の状況により、交差点に入つた場合においては当該交差点内で停止することとなり、よつて交差道路における車両等の通行の妨害となるおそれがあるときは、当該交差点に入つてはならない(道路交通法五〇条一項)のであるから、被告が右義務に違反したことは明らかである。
また、前方の車両等の状況により交差点内で停止した場合、対面信号が赤色に変わつたときには、第一次的には対面信号が青色に変わるまで自車の発進を差し控えるべきであり、仮に、交差道路における車両等の通行の妨害となるおそれがあるため、あえて発進進行するときには、交差道路を進行してくる車両の安全を充分に確認すべき注意義務があることはいうまでもない。にもかかわらず、前記認定のとおり、被告は、自車左前方にまつたく注意を払わず、原告車両と衝突するまでその存在を認識していなかつたのであるから、被告が右各義務に違反したことは明らかである。
(二) 他方、原告は、前記認定のとおり、青色信号にしたがつていたとはいえ、交差点手前の停止車両の先頭にあり、前方を注視していれば、交差点内部の車両の有無、動向をたやすく把握することが可能であつたと認められるから、被告車両と衝突する直前まで被告車両を認識していなかつた点において、前方不注視の過失が認められる。
(三) そして、右認定の原告と被告の両過失を対比すると、本件事故に対する過失の割合を、原告が二〇パーセント、被告が八〇パーセントとするのが相当であり、過失相殺として、原告の損害から二〇パーセントを控除することとする。
二 争点2(原告の損害)
争点2に関し、原告は、別表の請求額欄記載のとおり主張する。
これに対し、当裁判所は、以下述べるとおり、同表の認容額欄記載の金額を、原告の損害として認める。
1 原告の傷害、入通院期間、後遺障害
原告の損害算定の基礎となるべき原告の傷害、入通院期間、後遺障害について判断する。
(一) 原告は、本件事故により、右大腿骨顆上部複雑骨折、右下腿骨骨折、右足趾骨折、右脛骨神経麻痺の傷害を負つた(当事者間に争いがない。)。
(二) 原告は、本件事故後、救急車により神鋼病院に搬入された(当事者間に争いがない。)。
(三) 原告は、続いて、神戸市立中央市民病院に搬入され、同病院に、昭和六一年一二月一四日から昭和六二年三月八日まで入院した。
なお、原告は、入院開始日は昭和六一年一二月一三日である旨主張し、甲第二号証の二にはこれに沿う記載もあるが、前記のとおり、本件事故の発生したのは同日午後一一時二五分ころであること、甲第二号証の一によると、神鋼病院において、ギプス固定の施術が行われたことが認められること、当裁判所に顕著である本家事故の発生場所、神鋼病院、神戸市立中央市民病院の各位置関係、原告の入院が昭和六一年一二月一四日からである旨の甲第二号証の五、八、九、第三号証(いずれも神戸市立中央市民病院の診断書)の各記載等から、前記のとおり、原告が神戸市立中央市民病院に入院したのは、昭和六一年一二月一四日である旨認定した次第である。
(四) その後、原告は、みどり病院に、昭和六二年三月八日から昭和六二年四月二六日まで、入院した(当事者間に争いがない。)。
また、原告は、神戸市立中央市民病院に、足趾手術のために昭和六三年六月二一日から同年七月一五日まで、右膝関節可動域獲得手術のために平成元年六月一九日から同年八月二三日まで、抜釘手術のために平成三年九月二日から同月七日まで、それぞれ入院した(当事者間に争いがない。)。
したがつて、原告の入院期間は、合計二三一日である。
(五) 原告は、右各入院時期をはさんで、昭和六二年三月九日から平成四年一〇月七日まで、神戸市立中央市民病院に通院した(当事者間に争いがない。)。
なお、実通院日数は六四八日である(甲第二号証の六及び九により認められ、実通院日数五四五日との原告の主張は誤算である。)。
(六) 原告の傷害については、平成四年一〇月七日に症状固定した旨の診断書が発行され、右後遺障害は、自動車損害賠償責任保険において、自動車損害賠償保障法施行令別表一一急一〇号(一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの)及び一三級九号(一下肢を一センチメートル以上短縮したもの)に該当する、いわゆる併合一〇級である旨の認定を受けた(当事者間に争いがない。)。
2 損害
(一) 治療費
原告は治療費の主張をしないが、被告が、治療費が合計金一八九万八一一三円発生した旨の不利益陳述をする(なお、被告は、すべて被告が支払済みである旨併せて主張する。)。
そして、乙第二号証の一ないし四によると、治療費として、神鋼病院分金一五万四二六〇円、神戸中央市民病院分金一六〇万二八六〇円、みどり病院分金一四万〇九九三円、以上合計一八九万八一一三円の発生及び被告の支払が認められる(弁論の全趣旨により、右各証で「○」印の中に「h」の文字が書き添えられているものが治療費であると認められる。)。
(一) 付添看護費
原告本人尋問の結果、弁論の全趣旨によると、原告の右入院中、合計一〇〇日にわたつて、原告の足は固定するためにベツドに縛りつけられていたこと、右期間中は原告の母親が付き添つていたことが認められ、これらによると、右期間の付添看護費は、本件事故と因果関係のあることが認められる。
そして、近親者の付添看護費は、一日当たり金四五〇〇円の割合で認めるのが相当であるから、合計金四五万円となる。
(三) 入院雑費
入院雑費は、入院一日当たり金一二〇〇円(原告の主張金額)の割合で認めるのが相当である。
そして、原告の入院期間は、前記のとおり合計二三一日であるから、合計金二七万七二〇〇円となる。
(四) 医師への謝礼
原告主張の医師への謝礼は、神戸市立中央市民病院の医師に対して、五回の手術のたびごとに各五万円を支払つたというものであるが、これは医療行為に対する対価ではなく、原告の医師に対する感謝のあらわれであつて、支払うか否か及びその金額が原告の任意に委ねられていること、当該病院が神戸市立の病院であること等に鑑みると、本件事故との間の相当因果関係を認めることはできない。
(五) 通院交通費
(1) タクシー代
甲第九号証、原告本人尋問の結果、弁論の全趣旨によると、タクシー代として、一八八日分、合計金七九万六三四〇円(甲第九号証の一丁目は一一〇日分、金四八万〇二〇〇円、二丁目は六七日分、金二七万二二八〇円、三丁目は一一日分、金四万三八六〇円)を認めることができ、これを超えてタクシー代が発生したことを認めるに足りる証拠はない。
そして、前記認定の原告の傷害の部位、程度によると、右タクシー代は、本件事故と相当因果関係のある損害である。
(2) 電車代等
前記認定のとおり、原告の実通院日数は六四八日である。
そして、弁論の全趣旨によると、バス、地下鉄、ポートライナーを乗り継いだ場合の通院費用は一回当たり金一二二〇円であることが認められ、実通院日数から右タクシーによる通院日数を除いた四六〇日分の電車代等が、本件事故と相当因果関係のある損害であるとするのが相当である。
したがつて、電車代等は、金五六万一二〇〇円となる。
(3) 小計
(1)及び(2)の合計は、金一三五万七五四〇円である。
(六) 装具費
(1) 既払分
原告は、過去の装具費の主張をしないが、被告が、これが金三万四七〇七円発生した旨の不利益陳述をする(なお、被告は、すべて被告が支払済みである旨併せて主張する。)。
そして、乙第二号証の一、二、四によると、右金額の発生及び被告の支払が認められる。
(2) 将来の装具費
甲第七、第八号証、原告本人尋問の結果と、前記認定の原告の後遺障害の部位、程度とを総合すると、原告には、将来にわたつて、足底板装具の着用が必要であること、右装具代は、一個金一万一八〇八円を下らないこと、右装具の耐用年数は二年間(したがつて、一年間の装具代は金五九〇四円)であることが認められる。
なお、症状固定日までの装具費は、すでに(1)で認定しているから、症状固定日(原告は満二二歳)から、平成四年簡易生命表の男子満二二歳の平均余命である五五・〇〇年(当裁判所に顕著である。)の分にわたつての将来の装具費を認めるのが相当である。
そして、本件事故時における現価を求めるため、中間利息の控除につき新ホフマン方式によると(本件事故日には原告は満一六歳であり、六一年の新ホフマン係数は二七・六〇一七、六年の新ホフマン係数は五・一三三六)、将来の装具費は、次の計算式により、金一三万二六五一円となる(円未満切捨て。以下同様。)。
計算式 5,904×(27.6017-5.1336)=132,651
(3) 小計
(1)及び(2)の合計は、金一六万七三五八円である。
(七) 休業損害
甲第五号証、原告本人尋問の結果によると、原告は、本件事故当時、「アダルト平田」という靴の製造業者に、製靴工員として勤務していたこと、原告の昭和六一年九月から一一月までの三月間の収入は合計金五一万円であつたこと、原告は高等学校を中退していること、原告は、本件事故後、前記の傷害のために、症状固定日である平成四年一〇月七日まではまつたく仕事をしておらず、収入を得ていないことが認められる。
したがつて、休業損害算定の基礎となるべき年収は金二〇四万円(510,000÷3×12)であり、これを金二〇五万円とする原告の主張を認めるに足りる証拠はない。
ところで、賃金センサスによると、産業計、企業規模計、男子労働者、小学・新中卒の、各年における後記の年齢の労働者の平均賃金が次のとおりであることは当裁判所に顕著である(昭和六三年及び平成元年にかかる原告の主張は誤算である。)。
昭和六一年
~一七歳
金一四〇万三三〇〇円
昭和六二年
~一七歳
金一四五万九二〇〇円
昭和六三年
一八~一九歳
金一九六万五五〇〇円
平成元年
一八~一九歳
金二〇七万七四〇〇円
平成二年
二〇~二四歳
金二九三万四七〇〇円
平成三年
二〇~二四歳
金三一〇万八四〇〇円
平成四年
二〇~二四歳
金三二三万一六〇〇円
そして、昭和六一年における右平均賃金と原告の実収入額とを対比し、当裁判所に顕著である右期間における経済情勢の変化を総合すると、平成元年以降は、原告の収入は、少なくとも右平均賃金額を上回る蓋然性が高いものと認められる。
したがつて、原告の休業損害は、次の金額となる。
(1) 昭和六一年
右年収金二〇四万円を基準に、次の計算式により、一二月一四日から同月三一日まで一八日間の収入である金一〇万〇六〇二円を認める。
計算式 2,040,000÷365×18=100,602
(2) 昭和六二年及び昭和六三年
右年収金二〇四万円の二年間分、合計金四〇八万円を認める。
(3) 平成元年ないし平成三年
右平均賃金額の合計金八一二万〇五〇〇円を認める。
(4) 平成四年
平成四年はうるう年であるところ、右平均賃金額の金三二三万一六〇〇円を基準に、一月一日から症状固定日である一〇月七日までの二八一日間分、金二四八万一〇九一円(計算式は後記)を認める。
計算式 3,231,600÷366×281=2,481,091
(5) 小計
(1)ないし(4)の合計は、金一四七八万〇一三七円であるところ、原告の主張はこれを下回るので、原告主張の金額の限度で認める。
(八) 後遺障害による逸失利益
前記認定の原告の後遺障害の部位・程度によると、症状固定日である平成四年一〇月七日(原告は満二二歳)から満六七歳までの四五年間、原告は、労働能力の二七パーセントを喪失したとするのが相当である。
また、右算定に当たつては、基礎となるべき収入を前記平成四年の平均賃金額の金三二三万一六〇〇円とし、本件事故時における現価を求めるため、中間利息の控除につき新ホフマン方式によるのが相当である(五一年の新ホフマン係数は二四・九八三六、六年の新ホフマン係数は五・一三三六)。
したがつて、後遺障害による逸失利益は、次の計算式により、金一七三一万九七六〇円である。
計算式 3,231,600×0.27×(24.9836-5.1336)=17,319,760
(九) 慰謝料
前記認定の本件事故の態様、原告の傷害の部位、程度、入通院期間、後遺障害の部位、程度、その他本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、本件事故により原告に生じた精神的損害を慰謝するには、金六六〇万円をもつてするのが相当である(うち後遺障害に対する慰謝料に相当する分は金三六〇万円。)。
(一〇) 小計
(一)ないし(九)の合計は、金四二八三万二一五二円である。
3 過失相殺
争点1に対する判断で判示したとおり、過失相殺として、原告の損害から二〇パーセントを控除するのが相当である。
したがつて、右過失相殺の金額は、次の計算式により、金三四二六万五七二一円である。
計算式 42,832.152×(1-0.2)=34,265,721
4 損害の填補
被告から原告に対して、損害の填補として金九五三万九六一〇円が支払われたことは当事者間に争いがなく、乙第一号証、第二号証の一ないし四によると、これを超えて、合計金九六五万九六一〇円が支払われたことが認められる。
また、被告が、2(一)記載の金一八九万八一一三円及び2(六)(1)記載の金三万四七〇七円を支払つたことが認められるのは前記のとおりである。
したがつて、合計金一一五九万二四三〇円が原告の損害から控除されるべきであり、過失相殺後の金額から右金額を控除すると、金二二六七万三二九一円となる。
5 弁護士費用
原告が本訴訟遂行のために弁護士を依頼したことは当裁判所に顕著であり、右認容額、本件事案の内容、訴訟の審理経過等一切の事情を勘案すると、被告が負担すべき弁護士費用を金二〇〇万円とするのが相当である。
第四結論
よつて、原告の請求は、主文第一項記載の限度で理由があるからこの範囲で認容し、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条一項を、仮執行宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 永吉孝夫)
別表